2014年12月4日木曜日

「ハラキリ」でござる。


「ハラキリ」でござるぞ!

つい先日、高倉健、菅原文太がこの世に何の未練も無いかのように相次いで亡くなった。83歳と81歳のご立派な生涯でした。同じエイティーの私は「ハラキリ」を目前にして1週間前から入院している。5月から入退院を繰り返して今回で10回目、治療の大詰めとして開腹手術に臨むためである。これまで、CT腹部全体検査(computed tomography)・MRI検査(magnetik resonance imaging)・PET検査(positron emission tomography)・内視鏡検査・血液検査・尿検査・心電図検査・超音波検査・などあらゆる検査を重ねて脚部動脈硬化カテーテル手術・内視鏡胃部腫瘍切除・心臓カテーテル手術を行い、今回は自己血液保存をして胆嚢全摘肝臓一部切除周辺リンパ腫切除開腹手術を行うこととなっている。今回は5F外科病棟に入院することとなった。南北併せて41室150床程もある病棟である。10回にもなると自慢にもならないが経験豊かなベテラン患者、病院の状況を斜視的にも見る余裕がある。同じ病院でも病棟によって気風が異なり外科病棟は硬派の「ゲカ!」と言う雰囲気があって看護師も医師も患者に有無を言わせない内に秘めた肝っ玉の太い迫力があるように感じられる。勿論患者には優しく丁寧な基本的態度は変わらないが手術と言う緊張が厳しい内面を感じさせるのだ。手術の準備期間となる1週間は安静で体力の保持に努めなくてはならない。血栓をつくらぬための投薬を止めてヘパリンと言う薬剤の点滴に切替えるために20ml/hで定時定量を注入する優れものが輸液ポンプ「TERUMOTE-1618」だ。こいつに当初から46時中付き纏われている。難儀なことにこいつはバッテリーが1時間と持続出来ず絶えずコンセントからの充電状態で一寸離れると警告ブザーが鳴って帰床を強制させられる。同時に携帯用心電計で常時計測されている。3日前には下部切毛・爪切り・臍処置(オリーブ油でへそのゴマ掃除)直前CT腹部全体造影検査・腸内洗浄、これが苦痛となる。「ムーベン」と言う2Lの経口腸管洗浄剤液を2時間以内に無理やり飲まされる。そして入浴シャワーで腹部消毒し前日から絶飲食となる。手術室の無菌状態を保持するためにベッドでの入室を避け車椅子で行き、歩いて手術台に乗るそうである。尿管カテーテルを挿入して全身麻酔で仮死状態にして施術に入ることになる。その手術前夜23時頃だったか、突然に胸に板が張り付いたような圧迫感を感じて呼吸が出来なくなりゼイゼイヒーヒーともがくばかりで目の前が真っ暗となって冷や汗が前身を包む。無意識にナースボタンを押して救命を伝えた。直ちに当直の看護師が駆けつけて病状の緊急に「ICU!」と判断されて2FICU室に急送された。「もうこれで俺はダメか!」と意識朦朧の中、ただ息が苦しい!と叫ぶ自分があった。ICUintensive care unit集中治療室)ではスタッフ数名が強制酸素吸入・人口呼吸器・尿路カテーテル装着・血圧・脈拍数・血液酸素量・心電図などが常時監視モニターに表示される。直ちに強心・肺水腫などの治療が2時間に亘たり行われて、ようやく命を取り留めることが出来た。担当循環器医師がその夜当直勤務だったことが幸いだった。それにしても慎重に進められていた準備だったのに、その前夜に急性心不全を起こすとはなんと言うことか!今回の発作は「肺水腫」と言う症状で心臓の不全で肺血流の水分が吸収されず、肺に水が溜まり呼吸が出来なくなる状況となったものである。
翌朝ICUの個室に入室させてもらった。個室は12室あるが、この部屋は20㎡もある唯一外の景色が望める窓際で205号室。外科病室は502号何か不思議な気持ちがする。集中治療室と呼ばれるだけに医療設備は完璧である。血圧、血流、血糖値、呼吸数、脈拍、心電図などの計測器、患者の病状に応じた酸素呼吸装置、人工呼吸器などがずらりと並び各データーが常時モニターに表示される。それに輸液ポンプが横にあり、シンクが一つあるだけで無駄な装飾、置物は一切なくて冷ややかで殺風景なメカの詰め込まれた一室である。空調も照明も個室対応で24時間監視カメラも作動している。寝台に仰向いたままで廻りを見渡すと壁際に今年最後のページのカレンダーが掛けられていてその上にライトブルーの円形木枠の直径20cm位の掛け時計を見つけた。誰かがわざと置き忘れたかのように。何かを語りたげな姿で寡黙に文字盤を刻んでいる。この時計は時を告げるのだが2時なのに鳴らず5分過ぎておもちゃのピアノのような硬質の音でチンチンと2ツ打つ、そして20分経つと6ツ打つ。針は正確に動いているのに?マダラボケ時計なのである。あとで解ったことだがこの音は時計ではなく血液中の酸素量の変化を知らせる警告音だった。ICUの看護師のユニフォームはエンジ色で黒のストライブが両脇に入った上着に白のタイツを履いていて一般看護師とは違う特別な技能を持つスタッフなのだ。身体の清拭から歯磨き、食事介助まで看護以外の介護まで細やかなケアーに勤めてくれる重症患者看護のベテランが揃っている。2日間のICU治療を終わって一般病棟へ帰ることができた。担当看護師のYさんが手を握って「大変だったね~手術が出来なくなって残念だったけど病院内での急性心不全で幸いだった!また仕切り直しで頑張ってね~」と優しい慰めの言葉をかけてくれて瞼が熱くなった。また、今度の経験をブログに書いて見てはどうですか?と後押ししてくれた。食事もとれるようになって気持ちも落ち着いて来た。病院の配膳車はパナソニック製の数トンもある機能車で患者別のトレイの料理を一品ごとに冷熱保存出来る機能があり、数10人分の食事を一度に配膳することが出来る。また移動するときは前方監視カメラがで安全を確保するすごいものである。
この度は未練にも入院中手術を目前に心不全を起こし手術延期と言う恥ずかしい想いで一旦帰宅することとなった。
それにしても看護師のタスク(任務)は大変な内容である。BEDメーキングを始め入退院の激しい入れ替え作業、個々の患者の病状の把握監視、血圧体温血糖の計測、採血、点滴状態の点検、薬剤の交換、手術前の準備、術後の始末ケアー、清拭,洗髪、捕食介助、家族との対応、患者の苦情悩みのメンタルケアー、医師薬剤師との連絡打合せ、あらゆる雑事すべてが看護師の仕事と言える。患者の一人として看護師の理解をより深め、職業としての看護師の社会的地位がより高く認められることを願う。医師・看護師・薬剤師そして病院業務雑務に携わるすべての方々に深く感謝を捧げたいと思う。

 

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